物流コラム2025

【第4回】『自動化・省力化のためのマテハン機器最前線をよく知ろう!(ソータ編)』

【執筆】一木 秀樹 (いちき ひでき)/未来フォレスト代表

ソータとは?

ソータとは?

 ソータとは、物流センターや物流倉庫などで、搬送物(荷物や商品)を自動で仕分ける機械装置のことです。英語名(sorter)で仕分けとも言われます。仕分け機単体でのスタンドアローンタイプもあれば、システムと連動させての自動仕分けシステムもあります。

自動仕分けシステムとしては、インダクションベルトコンベヤで搬送物の切り出しを行い、バーコードリーダーで搬送物に貼りつけされた情報(バーコード)を読み取り、方面別や店舗別などに仕分けていきます。バーコードの代わりにOCR(文字認識)やRFIDなども使われます。人手による仕分けに比べて、高速で正確な仕分けが可能で、大量の荷物を効率的に処理できます。

自動仕分けシステム

 一番オーソドックスなタイプとして、スライドシュー方式がイメージしやすいと思います。スライドシューとは、搬送物を仕分ける際に搬送面上をスライドする部品のことで、本体コンベヤ(スラットコンベヤ)上を移動するスライドシューが、荷物を横に押し出して仕分けます。搬送物を傷つけにくく、多種多様な搬送物に対応できるため、物流センターなどで広く利用されています。

その他の方式としては、ダイバータ方式、プッシャー方式、浮き出し型方式、ベルトキャリア方式、チルト方式などがあります。

代表的な機種の紹介

Vポジソータ

 トーヨーカネツ(株)のスライドシュー方式の一つの機種です。定形な荷物や長尺物にも対応し、荷傷みや転倒が少ないのが特徴です。省スペースでの設置、エアーレスで省エネルギー性にも優れています。

その他のスライドシュー方式の機種としては、ニューポジソータ、パーセルポジソータ、ウイングポジソータがあります。ニューポジソータは、両側仕分けや大量処理に向く超高速仕分けが可能で、低温環境化でも安定的な稼働が実現できます。ウイングポジソータは、直角分岐のため分岐スペースが狭くでき、シュート分岐数も多くとれます。

椿本チエインより提供リニソートS-C

椿本チエインより提供:リニソートS-C

リニソート

 (株)椿本チエインの代表的なチルトトレイ式自動仕分け装置です。トレイが傾くことで、商品を自動的に仕分け先に送り込む方式です。特徴としては、省スペース、高い仕分け能力があげられます。

衣料品、雑貨、靴など、様々な形状の商品を仕分けできます。アパレル物流センターでの店舗別仕分け、ECサイト向商品の仕分け、 宅配便の仕分けなど多方面の用途で使用されています。代表的な機種としては、コンパクトで中小規模の事業所に導入しやすいリニソートS-Cなどがあります。

椿本チエインより提供クイックソート

椿本チエインより提供:クイックソート

クイックソート

 (株)椿本チエインのもう一つの代表的機種です。ターンローラ方式を採用していることが特徴的で宅配便配送センターや新聞などの出荷ラインで使用されています。

メンテナンス性に優れた「仕分け・分岐ユニット」も特徴の一つで、様々な搬送物に対応できる柔軟性も持ち合わせています。そのため、今ではクイックソート本体だけのユニット販売もやっており、使用される範囲は拡大されていると言えます。

伊東電機より提供F-RAT

伊東電機より提供:F-RAT

フラット直角分岐モジュール

 クイックソータのユニット販売例を紹介しましたので、ここで同じユニットで代表的な例となっています直角分岐モジュールを紹介します。ソータや分岐ラインに使われる分岐モジュールとして、伊東電機(株)のF-RATがあります。

搬送物の底面に優しい設計となっており、私も伊東電機に在職していた時は、様々な業界に導入しました。モータローラ方式コンベヤとの組合せによりフラットな分岐ラインになり、また、エアーレスで静かなため省エネになり、コンベヤフレーム機高が低い省スペースな搬送ラインが実現します。モータローラのコンパクト性を活かした様々なモジュール製品があるのも伊東電機製品の特徴です。

ポップアップダイバータ(30°・40°分岐装置)、スライドオープンゲート(コンベヤライン間の通路確保装置)、T-RAT(傾斜直角分岐装置)、GPR(防火シャッター部のコンベヤ装置)など。

プラスオートメーションより提供t-Sort

プラスオートメーションより提供:
t-Sort

t-Sort

 ロボットで仕分けするしくみが市場で脚光を浴びています(ロボットソータなどとも呼ばれています)。その代表例がプラスオートメーション(株)が扱う「t-Sort」になります。

小さなロボット(AGV)が、床置きのパレットや鋼製架台にPVCシートを敷いた上を縦横無尽に走行して、仕分けていきます。限られた省スペースの対応から大規模オペレーションまで対応できるのが特徴です。稼働開始も早いです。最短1日で導入・始動が可能です。オペレーションが簡単なので、トレーニング期間も短期間ですむ利便性もあります。

※トーヨーカネツではT-sortシステムとして取り扱っています。
※椿本チエインではT-Carry systemとして取り扱っています。

プラスオートメーションより提供t-Sort 3D

プラスオートメーションより提供:
t-Sort 3D

t-Sort 3D

 t-Sortの技術が応用された立体型のコンパクト単体ソータになります。単体でも使用できますし、連動しても使用できます。

単体で使用した場合は、わずか3坪のスペースで80間口以上の設置が可能になります。連動型は、2,000間口まで対応できる拡張性の高さです。t-Sortとt-Sort 3Dの両方が使用されている物流倉庫をみましたが、非常にコンパクトに収まっていました。

※トーヨーカネツでは3D Sorting Systemとして取り扱っています。

ROMSより提供ナノ・ソーター

ROMSより提供:ナノ・ソーター

ナノ・ソーター

 国際物流総合展2024で注目されたソータです。5坪から設置できて700~800ピース/時間を仕分ける高層ピース仕分機になります。標準で間口単位での出庫が可能です。

物流センターの天井高を有効活用したバッファエリアを設けられるのが特徴です。仕分けが完了したケースの一時保管にも対応できます。これにより仕分けが完了したラックの置き場を気にすることなく、次の工程の開始タイミングに関わらず、一度の作業バッチで大量に仕分け作業を行えます。

タクテックより提供GAS

タクテックより提供:GAS

GAS

 今やGASといえば(株)タクテックと言われるまでになりました。定番的なスタンドアローンタイプの仕分け機になります。GASはGate Assort Systemの略になります。

単なる仕分け機というよりもソリューション的な位置づけになります。バーコードをスキャンすると、該当する棚のゲート(投入口)が開き、そこに商品を投入するしくみです。仕分け間違いを物理的に防ぎ、検品作業の効率化も図れるのが特徴です。そのため、今や多くの物流センターや物流倉庫に導入されています。

ここで、混同しやすい機械装置としてのDAS(Digital Assort System)とSAS (Shutter Assort System)について説明を加えます。GASは、投入口が1箇所ずつしか開かないため、仕分け間違いを防ぐことに特化しています。

一方、DASは、複数人で同時に作業できるように、複数の投入口を同時に開けることができます。SASは、一度に複数のシャッター(投入口)を開けることができ、複数の作業者が同時に作業を進めることができます。一方、GASは、1つの投入口しか開かないため、より正確な仕分けが可能です。どこに重要視を奥かで機械装置の選定基準が変わってきます。

ソータの導入ポイント

 ソータも多種多様になりました。今まで紹介した中でもいろんな種類があることがおわかりいただけたと思います。ありすぎるだけに選択の基準が難しいと思われるのではないでしょうか?何を選定の基準にするのかを、ここでは考えてみましょう。

第一に仕分ける搬送物のサイズや重量、第二に仕分け能力が大前提になります。その上で、導入する現場の状況を踏まえて、機種選定を進めていくことになります。導入時のことだけでなく導入後についても考慮しておく必要があります。仕分けレーンの柔軟性、生産性、メンテナンス費用など...

【5つの選定の基準】

① 生産性

② スペース性

③ フレキシブル

④ 費用対効果

⑤ その他注意点

① 生産性

 自社で処理したい搬送物の大きさや重量を踏まえて、導入しようとするソータの処理能力を複数のソータと比較検討します。導入後に生産性があがらないと導入する意味がなくなります。想定する物量は、現時点だけではなく、今後の需要を見据えます。その物量を処理対応ができることが大事です。また、現場のオペレーションに適したタイプを選定しないと、作業者とのマッチングができず、逆に作業効率が低下する可能性もあります。

② スペース性

 コンベヤタイプのソータは、十分な設置スペースが必要です。搬送ラインの長さやシュート数及びシュートの長さなどスペースを考慮し、レイアウト設計をする必要があります。バーコードリーダーが読み取れなかったときのためにリジェクトラインも必要になります。スタンドアローンタイプはコンパクトになります。設置スペースの状況も十二分考慮しましょう。

③ フレキシブル

 ソータは原則設置すると、稼働後の移動や拡張が困難になります。移動や拡張の可能性がある場合は、スタンドアローンタイプやロボットタイプの必要性が増します。自社の現場の状況を考慮して、フレキシブルな対応が必要なのかも考慮しましょう。

④ 費用対効果

 導入コストだけでなく、ランニングコストがかかります。機械装置は電気を使用しますので電気代もかかります。メンテナンスとしての機械部品の交換も必要です。メンテナンス費用、点検、アフターフォローなどに関わるコストも考慮しましょう。その上で、費用対効果を事前に想定しておくことが重要です。

⑤ その他注意点

 仕分け業務の自動化による人件費削減効果も想定しましょう。ソータ導入により、WESや分析サービスなどとの接続により各種運用の数値を集めやすくなります。改善する要素もみえる化できるので、活用するのも一つのメリットです。

筆者プロフィール


一木 秀樹 (いちき ひでき)

一木 秀樹 (いちき ひでき)

未来フォレスト代表
日本物流システム協会マテハン塾 講師/月刊マテリアルフロー 営業企画室 室長

物流業界で35年以上のキャリアを誇る物流機器・マテハン分野の専門家。
伊東電機で26年間、営業部門の要職を歴任し、革新的なローラー内蔵型モーター駆動システムの普及や省エネコンベヤの開発に貢献。現在は未来フォレスト代表としてコンサルティング業務を展開する傍ら、JIMH「マテハン塾」講師や流通研究社『月刊マテリアルフロー』営業企画室長として、最先端の物流現場の取材・企画を手がける物流システムのエキスパート。

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WES(倉庫実行システム)とは?

物流倉庫業務における基幹システムで、原料や在庫といった物の管理を行うWMS(倉庫管理システム)と、倉庫内の設備のリアルタイム制御を行うWCS(倉庫制御システム)の間で、「物流現場の制御・管理に特化」したシステムのこと。 従来WMSが行っていた現場の制御と管理をWESに分離することで、WMSの役割がシンプルになり、自動化設備の導入や作業手順の変更等、業務の変化にスピーディーに対応することが可能となります。

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