物流コラム「未来への道しるべ」

YEデジタルは、変化の激しい物流業界を「倉庫自動化に特化したWES」でリードします。

【第5回】WMSとWES

【執筆】菊田一郎 エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト

 これまで4回にわたり、今後のアフターコロナ・労働人口減少時代には物流センター自動化が不可欠になること、その手段であるマテハン機器・物流ロボットには多様な種類があること、その運用最適化にはハードはもちろん、ソフトが大きなカギを握っていることをお話してきました。
 このシーズン1最終回では最重要ソフト、センター業務全体を管理する基幹システムであるWMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)と、これを補完し多様な物流自動化システム機器の連携・連動を最適化する仕組みとして注目される、WES(Warehouse Execution System、倉庫実行システム)について考察したいと思います。

なぜWESが必要になったのか

 物流センター自動化ステップを入門編の「レベル2」から「レベル3、4」へと進化させるチャレンジが、多くの現場で進展しています。新物流拠点で一括導入する場合も、既存の倉庫に複数の物流ロボット、マテハン機器を追加導入する場合もあるでしょう。でもその取り組みが進むほどに、新たな問題が顕在化してきました。

 従来、システム構築の元請け役を担ってきたマテハンメーカーやIT/SI企業は、自社製品と他社製品をつないで組み合わせ、全体システムを構築・稼働させてきました。その過程で近年、新規参入企業の新製品が続々登場。中国などの海外製品は低価格で、自動化ブームの一因をなしてきました。ところがそれら新製品は、制御がブラックボックス化された機種もあり、従来システムや設備との連携・連動が容易でないケースが多発したのです。

 とりわけ問題だったのが、既存のWMSとの連携でした。これらの機器はオーダー情報から作業計画に従って発信される入出庫などの指示をWMSから受け取り、機器の制御を直接担うWCS (Warehouse Control System、倉庫制御システム)が具体的な作動指示に変換することで、駆動します。

 ところが一般のWMSには、連携できる機器の限られる「メーカー縛り」があります。想定外の新機種をWMSに連携させるには、つどI/O部分のソフトウェアをWMS側・WCS側の双方で、新たに開発・改修しなければなりません。不特定多数の自動化機器をWMSにつなぎ、全設備を統合コントロールして稼働させるためには、すべてのコネクト部分に新規開発・改修が必要で、その工数とコストは膨大なものになります(図表1)。

 また連携機種が増えるほどWMSのプログラムは肥大化し、ただでさえ荷主ごとのカスタマイズで重くなっているWMSの安定性やフレキシビリティが、さらに損なわれる危険もでてきます。実際に困っていたユーザー企業の現場を、筆者はこの目で見てきました。

図表1 WES導入前/WMSと複数設備のWCSの連携に多大な工数

図表1 WES導入前/WMSと複数設備のWCSの連携に多大な工数

*YEデジタル提供資料より

WESが自動化機器の連携を容易に

 ではどうすればよいのか?関連各社が悩んだ末、生み出されたソリューションが、「WES」だったのです(WESの詳細な定義はまだ内外で確定しておらず、以下はYEデジタルの定義で話を進めます)。WESは、WMSとWCSの間をつなぎ、「物流現場の制御・管理機能に特化したシステム」です。そのうちYEデジタルが開発・提供する「MMLogiStation」は、国内・海外含め現時点ではまだ数少ない、WESを中核機能としてもつ倉庫自動化システム(図表2)。

図表2 MMLogiStationの全体システム構成

概要

*YEデジタル提供資料より

 これを例にWESの主な特徴をみていきましょう。

<特徴①>WMSと完全分離

 従来WMSが行っていた「現場設備の制御と管理」機能を抜き出し、WESに分離。これによってシステムをシンプル化し、柔軟な設備構成、作業フローを実現。WMSを改造することなく、自動化設備の追加導入や、作業手順の変更等、業務の変化にもスピーディーに対応できる。

<特徴②>プラグインで迅速・低コストに設備追加

 AGVやAMRなど自動化設備を制御するWCSとのインターフェースは、プラグインで簡単接続できる機能を整備。設備追加のつど何度もWMS/WCSの改修・カスタマイズが必要だった手間とコストを最小化。スモールスタートで物流量に合わせた設備の追加・拡張が可能に。
その結果、WESなら導入時にイニシャルコストが若干かかるものの、追加・運用コストを明らかに低減でき、追加が重なるほど累計コストの削減幅は大きくなる(図表3)。

図表3 自動化設備・WCS追加にかかるコスト比較

概要

*YEデジタル提供資料より

<特徴③>作業フローをビジュアル定義、庫内の全オペレーションを制御・管理

 特許技術「作業オペレーションデザイナー」では、主要な自動化設備の連携パーツをプラグインとして提供。作業を整理・分解してエクセル感覚でフローチャートを作成するだけで、WESが制御プログラムを自動生成。つまり逐一プログラムを書く必要のないローコード開発ができる。設備との物理的な連携に加え、届いた荷物、稼働データ、庫内設備、作業員…すべてを繋ぎ、管理・制御することが可能。

<特徴④>実態・効果を可視化

 倉庫内のすべてのオペレーションを把握し、ダッシュボードで実績を可視化・分析。問題がある場合3Dシミュレーションを行い、ボトルネックの特定と解決につなぐ (デジタルツインは2023年中にリリース予定、図表4)。

図表4 3Dシミュレーションとダッシュボードのイメージ

概要

*YEデジタル提供資料より

 このように、WMSと連携するWESを活用すれば、WCSを介して多数のマテハン・物流ロボットをスムーズに連動させることが可能になるようです。その上で、第4回でみた現場の知恵と情熱をない合わせた運用ソフトが機能するなら、「レベル4」の本格自動化センターへ、さらに「レベル5」の完全自動化センターへと発展させることも、あながち夢ではないかも知れません。

 こうして皆で「もっとワクワクする物流センター」を作っていきませんか? 物流センターの構内業務を楽しい、魅力的な仕事にすること。それが日本の物流の持続可能化に大きな役割を果たすことは、間違いないと思います。

             

(つづく)

YEデジタルは、変化の激しい物流業界を「自動倉庫に特化したWES」でリードします。

筆者プロフィール


菊田 一郎(きくた・いちろう)

菊田 一郎(きくた・いちろう)

エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト

1982年名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材を約1,000件実施、講演・寄稿など外部発信も多数。 2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より23年6月まで㈱日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師、21年1月よりハコベル㈱顧問。 著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)、「物流センターシステム事例集1~7」(流通研究社、単著)など。

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WES(倉庫実行システム)とは?

物流倉庫業務における基幹システムで、原料や在庫といった物の管理を行うWMS(倉庫管理システム)と、倉庫内の設備のリアルタイム制御を行うWCS(倉庫制御システム)の間で、「物流現場の制御・管理に特化」したシステムのこと。 従来WMSが行っていた現場の制御と管理をWESに分離することで、WMSの役割がシンプルになり、自動化設備の導入や作業手順の変更等、業務の変化にスピーディーに対応することが可能となります。